街のいたるところから勢いよく立ち上る白い湯けむり、あちこちから漂う硫黄の香り。大分県別府市は、一歩足を踏み入れた瞬間から「温泉の街に来た」という強い旅情をかき立ててくれる日本屈指の温泉地です。極上の湯に浸かって日々の疲れを癒やしたい温泉好きはもちろん、迫力ある奇観を楽しみたいファミリーやカップル、レトロな街並みを歩きたい女子旅まで、あらゆる旅行者を懐深く受け入れてくれます。
しかし、別府観光の代名詞である「地獄めぐり」をはじめ、魅力的なスポットが点在しているため、「すべての地獄を回る時間があるだろうか」「どれを選べば満足できるのか分からない」と悩む方も少なくありません。そこで本記事では、長年日本全国を取材してきた旅行ライターの視点から、絶対に外せない観光スポットの魅力や効率的な回り方、選ぶべき「地獄」の基準、さらにモデルコースや絶品グルメまで、別府観光を120%楽しむための情報を凝縮してお届けします。
別府が旅先として選ばれる理由
別府が日本を代表する温泉地として長年愛され続けている最大の理由は、その圧巻のスケール感にあります。源泉数・湧出量ともに日本一(※人が利用可能な源泉において)を誇り、地球のエネルギーを全身で体感できる場所です。
別府温泉郷の成り立ちは古く、奈良時代の『豊後国風土記』にもその存在が記されているほど歴史があります。明治時代以降、掘削技術の発達や港湾・鉄道の整備が進むにつれて全国から湯治客が集まるようになり、昭和初期にはレトロでモダンな温泉文化が花開きました。
また、別府の面白いところは、市内に「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれる個性豊かな8つの温泉郷(別府、浜脇、観海寺、堀田、明礬、鉄輪、柴石、亀川)が点在している点です。エリアごとに泉質や風景、街の雰囲気がガラリと変わるため、同じ市内でありながらまるで異なる温泉街を旅しているかのような奥深い体験が味わえます。
外せない観光スポット
初めての別府旅行で必ず押さえておきたい定番スポットを4つ厳選しました。見どころや所要時間、どんな人におすすめかを詳しく解説します。
別府地獄めぐり(海地獄など)
コバルトブルーに輝く熱湯の池や、真っ赤な泥が煮え滾る池など、自然が作り出す奇観を観賞する別府一番の人気観光コースです。「海地獄」「血の池地獄」「龍巻地獄」「白池地獄」「鬼石坊主地獄」「鬼山地獄」「かまど地獄」の計7つの地獄で構成されています。
「7つ全部回るべきか?」と迷う方も多いですが、結論から言うと、移動時間も含めてゆったり観光したいなら代表的なスポットを絞って巡るのも賢い選択です。時間が限られている場合や、要点だけを楽しみたい方に絶対おすすめなのが「海地獄」です。
海地獄は7つの地獄の中で最大の規模を誇り、涼しげなコバルトブルーの池から豪快に湯気が立ち上る幻想的な風景が広がります。園内には温泉熱を利用した熱帯性スイレンの育成池や、足湯コーナー、お土産ショップも充実しており、満足度が非常に高いのが特徴です。
また、天然記念物の噴出泉である「龍巻地獄」のダイナミックな間欠泉や、真っ赤な水面が印象的な「血の池地獄」も一見の価値があります。全7箇所を巡る場合は共通観覧券がお得ですが、代表的な2〜3箇所に絞って楽しむスタイルでも十分に別府の魅力を堪能できます。
- 見どころ:海地獄のコバルトブルーの絶景、血の池地獄の鮮やかな赤色、龍巻地獄の豪快な噴出
- 目安の所要時間:絞って回るなら1.5〜2時間、全7箇所を回るなら3〜4時間
- こんな人におすすめ:別府らしいダイナミックな景観を見たい人、写真映えするスポットを探している人
竹瓦温泉
別府市街地の中心部にひっそりと佇む「竹瓦温泉(たけがわおんせん)」は、明治12年(1879年)創設という歴史を持つ別府温泉のシンボル的存在です。現在の建物は昭和13年(1938年)に建て替えられたもので、重厚な木造唐破風(からはふ)造りの外観が圧巻のノスタルジーを醸し出しています。
館内に入ると、高い天井とノスタルジックな受付があり、まるでタイムスリップしたかのような感覚に包まれます。名物は、温泉で温められた黒い砂を上からかけてもらう「砂湯」です。浴衣を着て砂の上に横たわると、砂子さん(専門のスタッフ)が手際よく暖かい砂をかけてくれます。じわじわと身体の芯から温まり、じっくり汗をかく体験は爽快そのものです。
もちろん普通の内湯(男湯・女湯)もあり、レトロなコンクリート造りの浴槽で質の良い湯を満喫できます。歴史的な建築美と昔ながらの銭湯文化を感じたい方には外せない一押しスポットです。
- 見どころ:歴史を感じる昭和初期の建築美、本格的な「砂湯」体験
- 目安の所要時間:内湯のみなら40分、砂湯体験も含めるなら1.5時間程度
- こんな人におすすめ:レトロな雰囲気が好きな人、珍しい砂湯体験をしてみたい人

※雰囲気を伝えるためのイメージ画像(AI生成)です。実際の風景はGoogleマップや公式サイトでご覧ください。
明礬温泉の湯の花小屋
別府市街地から少し山手へ上がった場所にある明礬(みょうばん)温泉エリア。ここに広がるのが、藁葺き屋根の三角小屋が並ぶ「湯の花小屋」の景観です。この地域では、江戸時代から続く伝統的な製法で天然の入浴剤「薬用 湯の花」が作られており、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
地表から噴き出す温泉蒸気を藁葺き小屋の中に通し、粘土の層と反応させて湯の花の結晶を咲かせる仕組みは、世界でもここだけの貴重な技術です。見学エリアでは、小屋の内部構造や結晶が成長していく様子を間近で観察することができます。
周囲には強い硫黄の香りが漂い、山あいの静けさとともに「湯治場」ならではの情緒を強く感じられます。見学の後は、敷地内や周辺の売店で買える「地獄蒸しプリン」を味わうのが定番の楽しみ方です。
- 見どころ:藁葺き屋根が並ぶ独特の集落風景、江戸時代から続く伝統の湯の花作り
- 目安の所要時間:45分〜1時間(見学とプリン等の散策時間含む)
- こんな人におすすめ:ディープな温泉文化・歴史に触れたい人、絶品スイーツを楽しみたい人
別府ロープウェイ
別府の魅力は街中の温泉だけではありません。阿蘇くじゅう国立公園内に位置する鶴見岳(標高1,375m)の山上へと連れて行ってくれるのが「別府ロープウェイ」です。西日本最大級の乗車定員を誇るゴンドラに乗り、約10分間の空中散歩を楽しみながら山頂駅を目指します。
ロープウェイの車窓や山頂の展望台からは、別府の街並みはもちろん、青く広がる別府湾、晴れた日には遠く四国まで見渡せる大パノラマが広がります。四季折々の自然美も見事で、春の桜、夏の緑、秋の紅葉、そして冬には寒気に包まれた幻想的な霧氷(むひょう)と、季節ごとに全く異なる絶景に出会えます。
温泉街の湯けむりを上空から見下ろす視点は、地上では決して味わえない開放感があります。自然の雄大さを実感したい方にぜひ訪れてほしいスポットです。
- 見どころ:鶴見岳山頂からの絶景大パノラマ、四季折々の自然景観(秋の紅葉や冬の霧氷)
- 目安の所要時間:1.5〜2時間(往復乗車と山頂散策時間)
- こんな人におすすめ:絶景写真を撮影したい人、自然の開放感を味わいたい人
1泊2日で満喫!別府観光の王道モデルコース
公共交通機関(路線バス)またはレンタカーを使って効率よく回れる1泊2日の王道モデルコースをご紹介します。路線バスを利用する場合は、別府バスフリー乗車券などを活用すると移動が非常にスムーズです。
- 1日目 10:00 – JR別府駅に到着
まずは駅の観光案内所でマップを入手。路線バスまたはレンタカーで鉄輪(かんなわ)エリアへ移動します。 - 1日目 11:00 – 別府地獄めぐり(海地獄・かまど地獄など)
見どころが凝縮された海地獄や、多様な泉質を楽しめるかまど地獄を散策。湯けむり漂う街並みを歩きます。 - 1日目 13:00 – 昼食:「地獄蒸し工房 鉄輪」で体験ランチ
温泉の高温蒸気で自分で食材を蒸して食べる「地獄蒸し」に挑戦。素材本来の甘みに感動! - 1日目 15:00 – 明礬温泉へ移動&湯の花小屋見学
バスで山手へ移動し、湯の花小屋の風景を見学。散策後は名物の地獄蒸しプリンを堪能。 - 1日目 17:30 – 別府市内の温泉宿・ホテルにチェックイン
温泉に浸かり、夕食には大分名物の関あじや大分和牛に舌鼓。 - 2日目 09:30 – 別府ロープウェイで鶴見岳山頂へ
ロープウェイで一気に山頂へ。別府湾を見下ろす大パノラマで爽やかな朝をスタート。 - 2日目 12:30 – 昼食:別府市内で名物「とり天」を味わう
発祥の店や人気店で、サクサクジューシーなとり天とポン酢の絶妙な組み合わせを堪能。 - 2日目 14:00 – 竹瓦温泉でレトロ散策&砂湯体験
市街地へ戻り、竹瓦温泉へ。重厚な建築を見学し、温かい砂湯で旅の疲れをほぐします。 - 2日目 16:30 – JR別府駅前でお土産探し&帰路へ
駅高架下の商店街や駅ナカで、湯の花や大分のかぼすスイーツなどのお土産を購入して旅を締めくくります。
別府で絶対に味わいたい絶品ご当地グルメ3選
豊かな温泉資源と海・山の幸に恵まれた別府は、美食の宝庫でもあります。訪れたら絶対に食べておきたい3大グルメをご紹介します。
1. とり天
大分県民のソウルフードであり、別府のレストランが発祥とされている「とり天」。一口大に切った鶏肉にニンニクや醤油で下味をつけ、天ぷら衣でサクッと揚げた逸品です。から揚げとは異なり、衣がふんわりサクサクしており、からしポン酢につけてさっぱりと食べるのが別府流。ジューシーな肉汁と爽やかな酸味がマッチして、箸が止まらなくなります。
2. 地獄蒸し料理
温泉から噴き出す約100度の高温蒸気を利用して食材を一気に蒸し上げる、別府伝統の調理法「地獄蒸し」。野菜やエビ、豚肉、卵などを専用の釜に入れ、温泉の蒸気で蒸すことで、余分な油が落ちて素材本来の旨味と甘みが極限まで引き出されます。温泉の微量な塩分がほのかに付き、何もつけなくても驚くほど美味しい体験ができます。
3. 関あじ(関さば)
大分県豊後水道の速吸瀬戸(はやすいのせと)と呼ばれる一本釣り漁場で獲れるブランド魚「関あじ」。激しい潮流にもまれて育つため、身がキュッと引き締まり、程よい脂の乗りとコリコリとした抜群の歯ごたえが特徴です。新鮮な刺身でいただくと、通常の味とは一線を画す上品で濃密な旨味が口いっぱいに広がります。

※雰囲気を伝えるためのイメージ画像(AI生成)です。実際の風景はGoogleマップや公式サイトでご覧ください。
アクセスとベストシーズン
別府へのアクセスは、飛行機を利用する場合は「大分空港」からリムジンバス(エアポートライナー)で約45分〜50分と非常にスムーズです。電車の場合は、JR博多駅から特急「ソニック」に乗車して約2時間でJR別府駅に到着します。
別府の季節ごとの見どころや旅のポイントを以下の表にまとめました。訪問前にぜひ参考にしてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 春(3月〜5月) | 気候が穏やかで散策に最適なシーズン。別府ロープウェイ周辺や扇山などの桜の名所が見頃を迎えます。毎年4月上旬には「別府八湯温泉まつり」が開催され、街全体が賑わいます。 |
| 夏(6月〜8月) | 鶴見岳などの高原エリアは避暑地として人気。別府湾の大輪の花火大会など夏イベントも盛り上がります。温泉上がりの水分補給と熱中症対策を忘れずに。 |
| 秋(9月〜11月) | 鶴見岳や山間部の紅葉が見頃を迎え、温泉街散策や地獄めぐりが最も心地よいベストシーズンです。食べ物も美味しく、観光とグルメを存分に満喫できます。 |
| 冬(12月〜2月) | 寒さが増す季節だからこそ、湯けむりが最も美しく立ち上り、温泉のありがたみを身体中で実感できます。鶴見岳山頂での霧氷観賞も冬ならではの楽しみです。山間部を運転する場合は路面凍結にご注意ください。 |
別府観光に関するよくある質問
Q. 地獄めぐりは全7箇所すべて回るべきですか?効率的な選び方は?
時間にゆとりがある方(半日以上取れる方)は、割引になる共通観覧券を購入して全7箇所を巡るのがおすすめです。しかし、滞在時間が限られている場合や効率重視なら、最大規模の「海地獄」、間欠泉の「龍巻地獄」、赤い池の「血の池地獄」の3箇所を中心に回るだけでも十分に楽しめます。
Q. 別府市内の移動はバスとレンタカーのどちらがおすすめですか?
地獄めぐりや竹瓦温泉、明礬温泉など主要な観光地を中心に巡る場合は、路線バスが非常に発達しているためバスだけでも十分に観光可能です。「フリー乗車券」を利用すれば交通費も抑えられます。一方、由布院へ足を伸ばしたり、鶴見岳周辺や山間部の隠れた名湯を自由に巡りたい場合はレンタカーがあると圧倒的に便利です。
Q. 温泉の日帰り入浴を利用する際、持参したほうがよいものはありますか?
竹瓦温泉などの伝統的な共同浴場では、フェイスタオルやシャンプー・石鹸類が備え付けられていない(または有料販売)場合が多いです。小回りの利く小ぶりのフェイスタオル1本と、濡れたものを入れるビニール袋を持ち歩いておくと、思い立ったらすぐに湯巡りが楽しめて大変便利です。
まとめ:湯けむりに包まれる極上の温泉街・別府へ出かけよう
別府は、圧倒的な湧出量を誇る温泉の恵みと、地球の息吹を感じる地獄めぐり、歴史あるレトロな建築、そして地獄蒸しをはじめとする美味しいご当地グルメが揃った、まさに日本の温泉文化の集大成とも言える街です。
地獄めぐりでどこへ行くか迷ったら、まずは「海地獄」からスタートし、ご自身のスケジュールに合わせて散策ルートを組み立ててみてください。どこを切り取っても、あたたかな湯けむりと心ほぐれるひとときがあなたを迎えてくれます。
心も体も満たされる特別な温泉旅へ、あなたも出かけてみませんか?訪問前にはぜひ各施設の最新情報を公式サイトなどでチェックして、最高の別府旅行を計画してくださいね。
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